日々の生活の中の出来事を題材にした前店主の短歌(平成27年作)です。
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今日の友は 冷たきベットに 横たわる 仏になりて 家に帰ろう 呼吸(いき)荒らく 寝返えり打ちし 友の姿 苦しかろうに この世の息は

おばあちゃん あなたの声が 聞こえます 「肩刺せ裾刺せ 寒さが来るぞ」 「綴れ刺せ」 鳴くコオロギに 祖母を思う 厚手の肌着 今日は購う

あれこれと 特効薬を 探せども 妻の湿布と 「寝る」がいちばん 不用意に 立てば臀部に 痛み走り いよよ苦難は 近づいて来る 題「ぎっくり腰」

車窓より 色づく街路樹 指さして ナナカマド知る 高原の駅 「かがやき」は 光を放ち 入線す こころときめく ふたりの北陸 題「旧婚旅行」

六十路越え 猛暑つづきの 昼下がり ソフトクリーム われにはやさしい パーラーの ショウウィンドウ 眺めては ソフトクリーム 買えずにいたね 題「ソフトクリーム」

語尾伸ばし 「ばばぁ」と言いたい ときもあり されど女孫は 「ばーば」と言うなり 語尾上げて 「じーじ」と呼ばれる 我ありき 愛し女孫の やさしさにふれ 題「じーじとばーば」

くるくると 洗濯マシンは 働いて 妻はひとりで コーヒーブレイク ふる女房 今朝はなにやら うれしそう 洗濯すすむ 梅雨の晴れ間に 題「入梅」

千恵子さん(専務)の薔薇園に今年も美しい花が咲きました。

咲き競う 薔薇の根元に 妻の汗 一年がかりの 夢のステージ 早朝の 咲き始まりし 薔薇の花 携帯電話の シャッターの音 題「薔薇の花」


児童なき 学舎磨きての 美術展 ひらけば賑わう 山の学校 教室の 窓より流るる 幼子の 唱歌聞きつつ 微睡みており 題「ふるさとの学校」

手作りの 野菜惣菜 てんこ盛り 売り手も買い手も 笑顔のマルシェ ワゴン車の ドア跳ね上げて 店開き 月に一度の 手づくりマルシェ 題「マルシェ」

幼子の か弱き腕に 点滴の 針刺す魔女は 若き看護師 出来るなら 代ってやりたい この我が 一才半の 女孫の入院 題「女孫の入院」


女房の 拵(こさ)えてくれた 手料理で ひとり正月 ほろ酔い気分 徳利に 酒注ぎ入れ 湯煎にて ひとり飲みする 正月もあり 題「ひとり正月」